なるほど 豆知識
H30.5月号 「携帯電話次世代通信「5G」でどうなるの?」 ; 記事提供: 吉本 貴之(大陽通信工業(株))
2020年の実用化・商用化に向けて開発が進められている新技術に、放送分野の「4K・8K放送」、自動車分野の「自動運転」、そしてネットワーク分野の「5G」があります。今よりテレビ画像が高精細になる「4K・8K放送」とドライバーが運転をしなくてもクルマが自律走行する「自動運転」は進化の姿をイメージしやすいですが、5Gについてはどんなことができるようになるのかがわかりにくいかもしれません。それは5Gが、「4Gとの違いは速度が●●倍!」といった単純な高速化だけでなく、新しい価値に満ちた次世代社会を産み出すことを目的に設計されているからです。4K・8K放送と自動運転もその新しい価値の一つで、5Gはこれらを支える役割も担っています。
5Gという名称は、新聞や雑誌、ネットニュースなどでしばしば報道されていますから、言葉自体は皆さんにとって馴染みがあると思います。
4GのGは「Generation(世代)」のことです。つまり4Gは「モバイルネットワークの第4世代技術」を意味しています。5Gは、4Gの次に予定されている「モバイルネットワークの第五世代技術」のことで、一般には「第五世代移動通信システム」と呼ばれています。
それでは5Gはどのような位置付けになるのでしょうか。5Gがターゲットとするのは、「2020年代の社会を支えるモバイルネットワーク」です。ちょっと漠然としているように感じられるかもしれませんが、「多くの場面」で「多様なニーズ」に応えられるようにしたいと考えられています。4Gが「スマートフォンのための技術」だったとすると、5Gは「すべての端末とすべてのアプリケーションのための技術」と言えるのかもしれません。
大予想! 5Gのある未来の生活
5G時代を迎えると、われわれの生活はどのように発展するのだろうか? 技術説明だけではイメージしづらいので、少し未来の予想も含め、具体例をあげてみよう。
【ケース1】自動車
自動車分野で大きく期待されるのは、自動運転カーの実用化だろう。車が自律的に道路状況を判断して走行し、さらに信号機、近隣を走行する自動車や自転車、歩行者などからも情報を取得するようになれば、より安全性が高まる。先行車からの情報や道路の混雑状況も把握し、ルートを最適化することで、時間短縮や省エネも実現。万が一の際は、遠隔操作(運転)も可能になる。また、車速やさまざまなセンサーから得た情報を共有することで、異常のある車はトラブル発生前に安全に停止させたり、迅速な救護やメンテナンスも行える。
【ケース2】ドローン
5G通信によってドローンをコントロールできる範囲が広がり、日本を縦断する広域型の登場も期待できる。宅配や、橋梁、道路の保守点検など、現在期待されている用途に加え、ドローンの活用領域がさらに広がっていくことになる。
【ケース3】造成/建築
すでに土地の大規模造成現場で、ドローンで俯瞰および測定を行い、ショベルカーやダンプカーが設計図面に従って高精度に造成を行うシステムが実用化されている。今後、GPSの高精度化や5Gの登場により、街中の小さな現場も無人化が可能に。重機の操作や現場監督も遠隔から操作できるようになるかもしれない。
【ケース4】遠隔手術
医療分野で期待されるのが遠隔地からの手術だ。離島などにいながら、都市圏の専門医の施術を受けられるようになる。手術ロボットが検出した触覚をリアルタイムで執刀医に伝えることができ、より高度な手術も確実に行える。
【ケース5】8K映像の伝送
エンタメ分野での5G利用に関する展望もご紹介しよう。現在、4K映像の伝送には20Mbps前後の帯域が必要とされている。これが、8Kではさらに2倍程度が必要であると見込まれており、放送衛星を用いたブロードキャスト等は多チャンネル化が難しくなる。そこで、5Gで平均100Mbps(最大10Gbps)の通信が実現すれば、8K伝送の普及に貢献しそうだ。さらにその先として、ホログラム立体化、オーディオのハイレゾ多チャンネル化など、コンテンツのリッチ化をめざす場合も、5Gに期待がかかる。こうした映像の高精細化、情報量の増大は、上記のすべての分野をより高度化するのにも役立つのだ。
さいごに
5Gのある未来は、まるでSF小説のように感じるかもしれないが、2020年の運用開始をめざして実際に検討が進められている真っ只中だ。56年ぶりに開催される東京オリンピックを、自動運転カーで会場に向かって楽しむか、はたまた、自宅にいながら8K解像度のVRで疑似体感するか。いずれにしても楽しみである。
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