なるほど 豆知識
R1.5月号 「口呼吸になっていませんか?」 ; 記事提供: 安元重実(やすもと歯科医院)
ゲームに夢中になっている子どもさん。お口が空いたままになっている姿を見ることがあると思います。大人の私は大丈夫!そう思っている人は多いと思います。しかし、歯の治療をしていて、「この人も口呼吸だな。」って思うことが良くあります。自分では気づいていなくても口呼吸の方は意外に多いのです。スマートフォンの操作に集中している時も頭が下がって口呼吸になりがちですし、日頃から会話が多い職業の人や私たち歯科医も診療中にマスクをするため気道抵抗が上がり口呼吸の癖がついてしまうと言われています。
さて、人には2つの呼吸方法があります。「鼻呼吸」と「口呼吸」です。
その中でも人に適した呼吸方法は「鼻呼吸」になります。
鼻を通して呼吸する事で細菌の侵入も防げますが、口呼吸は、歯周病をはじめ、口唇の乾き、喘息、鼻炎、いびきなどいろいろな全身疾患の増悪因子であり、また歯並びが悪くなり顔貌にも影響を与えます。
鼻で呼吸をすることで、アトピーなどのアレルギーの改善、インフルエンザや歯周病などの感染予防、リウマチや喘息などの症状を軽くすることができます。
通常呼吸は鼻を通して上気道から気管、気管支へ空気を送り、肺胞へと届きます。肺胞と呼吸細気管支で酸素の摂取と二酸化炭素の排出が行われます。気管には、広範囲に線毛細胞が分布し、平滑筋が存在します。線毛は乾燥した空気により委縮したり、寒冷刺激で平滑筋が痙縮したりします。このことからも外気の加湿、加温効果が劣る口呼吸より、鼻呼吸の方が体にとって優しいのです。
鼻に疾患がある場合は、鼻疾患の治療がまず必要です。鼻疾患が無くても自分は慢性的口呼吸状態であると自覚を持っていただくと良いと思います。
慢性的口呼吸状態では、舌の筋力が低下しています。そのため、舌が低位置となり口からの空気の取り込みが楽になってしまいます。見た目では、二重顎となってしまいます。舌の筋力が正常であれば、舌背は硬口蓋(上あご)に密着し空気が口を通りませんから自然に鼻呼吸となります。そこで、低舌位を改善し、口呼吸から鼻呼吸に促すために舌筋の筋力を改善させる「あいうべ体操」をお勧めします。「あいうべ体操」は、口輪筋を鍛えるだけでなく「べ」を入れることで舌筋を鍛える事が出来ます。1セット4~5秒程度のゆっくりと大きな動きで10回連続して行い、1日に3階繰り返します。まずは、1日30回を目標にします。顎関節症など口を大きく開けることができない場合は、「い」と「う」の運動だけでも良いそうです。そして、平常時には舌の位置を正常位(舌背が硬口蓋に密着)に置いて口唇を閉鎖しておくことを心がけます。
日中は意識的に口を閉じることができますが、無意識な睡眠中開口状態になると口腔乾燥による口腔環境の悪化や舌根沈下による気道閉塞が起こります。これを防ぐためには、「口テープ」が有効です。ドラッグストアでも専用品が販売されていますが、歯科でも歯科専用品「マウスリープ」((株)ヨシダ)が販売されています。
インフルエンザ予防でもマスクの着用やうがいの効果に疑問が呈されてきています。
鼻で呼吸することの大切さを見直してみてはいかがでしょうか。
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